東京経済大学経営学部准教授の協力を得て

 「会社の寿命は30年」──。

 日経ビジネスは時代を表す数々のキーワードを生み出してきたが、その中でも最もよく知られているのは、この衝撃的なフレーズだろう。

 今や定説となった感さえあるこの仮説が同誌に初めて登場したのは、1983年9月19日号に掲載された「企業は永遠か」と題する特集記事であった(関連記事)。

 この特集において同誌は、日本経営史を研究する中村青志・東京経済大学経営学部准教授の協力を得て、「日本のトップ企業100社」の100年間の変遷を調べた。

 総資産額の多い上位100社を、1896年(明治29年)から1982年(昭和57年)までほぼ10年おきに抽出。ランクインした会社の移り変わりを分析して、「会社の寿命──1企業が繁栄を謳歌できる期間──は、平均でわずか30年」という結論を導き出したのである。

 この特集をベースにした単行本『会社の寿命─“盛者必衰の理”』(日本経済新聞社、文庫版は新潮社が発行)がベストセラーとなり、会社の寿命30年説は一般に広く知られるようになった。



会社の平均寿命は本当に30年か?

 しかし、会社の平均寿命が30年という結論については賛同しかねる。なぜなら、現実には100年以上にわたって繁栄を謳歌し続けている企業が少なくないからだ。米国には、デュポンのように200年余りもフロントランナーの地位を維持している会社もある。

 ただし「会社の寿命」を「事業の寿命」に置き換えると、話は違ってくる。拙著『戦略不全の因果』(東洋経済新報社)を書くために上場企業1013社を調査した結果からすると、事業の平均寿命については30年という数字がかなり当てはまるのだ。

 にもかかわらず、30年はおろか100年も200年も繁栄している企業がある。必然的に導かれる結論は、長寿企業は主力事業を巧みに入れ替えて存続を図っているということだ。

 ピークを過ぎて衰退し始めた事業から新たな成長事業へと乗り換え、常に勢いのある事業を主軸に据える。これが、永続する企業の条件なのである。











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