内田君も僕も、これからずっとこのままの方法論でやるとは限らないもんね

豊田 だって音楽のツールが95年、96年くらいと比べて大分変わったもん。サンプラーが普及して、ターンテーブルがライブハウスに置かれて、コンピューターをみんなが手にしてね……それとは全く関係のない二人が僕ら(笑)。


内田 音楽作る欲求がなくなってしまったのも、技術の向上の弊害かも知れないですね。本来やるべきところをコンピュータが肩代わりしてくれる。



豊田 何でも出来るから、何もしなくなる。



内田 僕はその技術や方法を知ってしまうのは危険だと思うんです。一回知ってしまったら、以降それに頼ってしまうんじゃないかって恐さがあるんです。



豊田 内田君も僕も、これからずっとこのままの方法論でやるとは限らないもんね。



内田 このパターンだと、僕ら一生金持ちにはなれないでしょ(笑)。だってアナログ録音って、今一番お金がかかるから。オープンリールは一本で30分しか録音できないんですよ。その上24chしか使えなくて、値段が3万円もする。そりゃみんなプロ・トゥールスを使うわな。



豊田 音楽を作るのは本当に手間がかかる作業ですよ。



内田 でも今はパソコン1台あれば、楽にある程度のところまで編集ができる。そういう便利さがいろんな不都合や歪みを引き起こすんじゃないかと思ってるんですよ。本来は耳で作業するものを、目で編集するなんて。



豊田 作っている時は聴覚しかないからね。



内田 だから、音楽が聴く愉しみではなくなってきてるんですよ。



豊田 視覚で音楽を作っている人間としては、目で見て、音程やリズムを確認していく方が安心できるんだろうね。だけど、音だけの方がゾワッとする興奮があるし、俺は好きだな。視覚に頼らず、聴覚だけで各人が情景や風景を想像するし、それが楽しい。だから技術の発展って、発展とは思えないのよ。チェック、確認がしたいだけっていうかさ。











豊田道倫_内田直之対談




出典:http://www.tractor.co.jp/toyota/toyota_taidan.html

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